灘区からお越しのN様より年代物の2本のヤマキのご依頼を頂きました。
1本目はYW-50Mです。
年期が入った縦ロゴ、トップ単板のÐ-42を彷彿とさせるヤマキですが裏板の下部がパックリと浮いていて何とか治して欲しいとのご依頼でした。
長い間弾いていなかったこのヤマキを最近、ギターを始めたお孫さんが、爺じぃ!このギター割れてんでぇ!と教えてくれたそうです。
裏板がバインディングから奇麗に浮いている状態だったのでしっかりと押さえつけて接着させました。
バインディングの一部も欠けていた箇所も補修して、目立つ傷もタッチアップしときました。
接着の状態を確認してボディをコンコンとノックしてみるとトップ側で鈍い音がしていたので診るとXブレーシングのどちらも四隅に浮きがありましたので、内部から押し上げて外側からも押さえつけてしっかりと接着させました。
修理後はボディーに強度が復活してノックするとカンカンと硬い音が響いて良い感じになりました。
弦高調整して弾き易く調整できました。
修理後にケースが無かったので、オーナーさんからこれからは大事に使いたいからと丁度良いハードケースを購入してもらいまして、流石に単板のゴージャスなヤマキらしい豪快な鳴りが復活いたしました。
もう一本はこちらもヤマキで初期の味わいのある0フレット・ブラスナット&アジャスタブルブリッジのF-120です。
こちらのヤマキは友人さんから頂いたそうで、ブリッジが酷く浮いておりました。
ヤマキの低価格帯のって大抵このようにお腹が膨らんでブリッジが浮いている個体をよく見ますが、ブリッジ下周りがかなり膨らんでいてこのまま接着してもまたブリッジの端から浮いてくるのでどうしようかと内部を診てみると裏のブリッジプレート自体が少し湾曲していて幅も狭いプレートだったので、ブリッジプレートの下側に新たにプレートを追加してトップ板を強化してプレートを貼り付けることで膨らんだ板を少しフラットに出来るのでこのような策を思いついてやってみました。
よく表板の膨らみを挟み込んで元に戻す事をやったりしているのを観ますが、また元に戻ることが多いので、特に古い廉価版のアコギは華奢な構造のものが多いのでこのようにプレートで強化する方が多少鳴りに影響するかも知れませんが根本的に設計が駄目なので今回はこのようにやってみました。
こちらもXブレーシングのブリッジ周辺に浮きがありましたのでそれも直してからブリッジを接着させました。
ブリッジ浮きのメカニズムって根本的にトップの強度が弱くて、ブレーシングに浮きとかが出来てお腹が膨らんできてトップの変形に耐えられらなくなってブリッジの端から浮いてくる⁈のではないかとこの個体を診て感じました。まぁこのヤマキ特有のトップの薄さ故の鳴りの良さもあるので痛しかゆしということでしょうか…
ブリッジがしっかり付いたヤマキは0フレット&アジャスタブルブリッジ特有のサスティーンの少ないジャキジャキな元気な鳴りが復活しました~
オーナーのNさんも復活した2本のヤマキの事をとても喜んで頂いて、特にお安いF-120の独特な鳴りが気に入って頂いたようでとても愛着が湧くギターになったと喜んで頂けました。
最初、F-120はタダでもらったギターやから治ったら、私に好きなようにして~と頂けるみたいな事だったのですが、私もこの手の0フレット&アジャスタブルブリッジのヤマキが欲しかったのですが、小ぶりなフォークボディーのが好みなのでそれはまた探す事にしてお安い修理代でオーナー様にお返ししました。
色々とNさんとギターの事や音楽の話をさせて頂いて、私の所にこの2本のヤマキを持ってきて良かった!”ここに持ってきて治してもらったのはこのギターの運命みたいやったんや”と嬉しいお言葉を頂いて私も人のギターやのに自分の事のように嬉しくなりました。
治ったF-120をくれた友人さんにも見せてあげて下さいませ~
少し年上のNさんは最近、お孫さんがギターを始めたそうでこのヤマキ観たら孫も喜ぶかなぁと嬉しそうに優しいお爺さんの顔を覗かせておりました。
素敵なオーナーさんと2本のヤマキとの出会いでありました。
またのご依頼お待ちしております<(_ _)>
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